2022年10月19日水曜日

記者会見を行ないました

2022年10月18日(火)17時より
厚生労働省会見室(東京都千代田区霞が関)にて 

~国際連合 障害者の権利に関する委員会 日本審査第1回総括所見を受けて~
警察官職務執行法の「精神錯乱者」は国際的に恥ずかしい

と題し、記者会見を行ないました。

2022年9月9日、国際連合の障害者の権利に関する委員会は、
日本における障害者権利条約に基づく国内施行状況の
第1回報告に対する総括所見を公表しました。

※国際連合ページの総括所見ダウンロードページ(英語のみ)
 United Nations Human Rights  CRPD/C/JPN/CO/1 (English)
 https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CRPD%2fC%2fJPN%2fCO%2f1&Lang=en 


そのなかで、「精神無能力」「精神錯乱」「心神喪失」等の
法律上の文言などについて懸念を表明し、
日本の国内法等において「身体的または精神的障害」に基づく
軽蔑的な表現や欠格条項などの法的制限を廃止するよう勧告しました。

「安永健太さんの事件に学び、共生社会を実現する会」(略称「健太さんの会」)が、
2021年9月25日に実施したオンライン企画で公表した
警察官職務執行法から「精神錯乱」という用語を削除するべきという意見を含む
警職法改正提言案を後押しする勧告内容です。

会見では下記の声明を公表し、質疑応答を行ないました。

会見のようすは以下の動画をご覧ください。



声明は以下のとおりです。
PDF版はこちら

 

20221018

【声明】

国際連合「障害者の権利に関する委員会」による日本審査第1回総括所見を受けて

安永健太さんの事件に学び、共生社会を実現する会

 

202299日、国連障害者の権利に関する委員会(以下、「障害者権利委員会」)は、日本の第1回報告に対する総括所見を公表した。

障害者権利委員会は、「精神無能力」「精神錯乱」「心神喪失」などの蔑称や、「心身の障害」を理由とする欠格条項などの差別的な法的制限について、懸念を表明し、日本に対し、国内法等において、「身体的または精神的障害」に基づく軽蔑的な表現および欠格条項などの法的制限を廃止するよう勧告した。

 2007925日、佐賀市で安永健太さんという青年が、自転車に乗って障害者作業所から自宅に帰る途中、不審者と間違えられ、警察官から後ろ両手錠を掛けられ、5人もの警察官にうつぶせに取り押さえられて亡くなるという事件が起きた。その裁判では、警察が健太さんは「精神錯乱」状態だったと主張し、判決で警察の行為は正当と認定された。

 我々は、健太さんのような事件がまた起きることは何としても防がなければならないとの思いから、「安永健太さんの事件に学び、共生社会を実現する会」(略称「健太さんの会」)を立ち上げた。

そして、当会は、2021925日、警察官職務執行法(以下、「警職法」)から「精神錯乱」という用語を削除するべきとの意見を含む警職法改正提言案を発表した。

警職法は、3条で、警察官の職務行為として、精神錯乱者又は泥酔者に対する保護行為を定めているが、警察官らは、誰一人として健太さんに知的障害や発達障害があることに気づかず、障害があるのではとの思いを巡らして配慮をすることもなく、自らの警告に従わないとの一点を以って、健太さんを精神錯乱者だと決めつけ、健太さんを取り押さえた。すなわち、健太さんの尊い人命は、「精神錯乱」という用語に該当するとして失われたのである。

本総括所見で、障害者権利委員会は、「障害者に対するパターナリスティックなアプローチを伴うことにより、障害関連の国内法および政策が、条約に含まれる障害の人権モデルと調和していないこと。」を懸念し、上記の勧告を出した。このことはまさに、警察官らの無知・無理解に基づく障害者の人権軽視は、警職法が、「精神錯乱」者という表現を取っていることから正当化・固定化され、助長されたものに他ならないことを示している。ちなみに、警職法は1948年に制定されたもので、制定以来基本的な改正はなされていない。

政府は、第1回審査(建設的対話)で、「精神錯乱」は軽蔑的な表現ではないと回答したが、「精神薄弱」「精神分裂」「痴呆」がそうであったように、言葉の裏側に差別的な意味が隠れている言葉は多数存在し、「精神錯乱」も同様であると、障害者権利委員会は明確に指摘したものである。

よって、当会は、国に対して、総括所見の勧告を受け入れ、速やかに警職法の「精神錯乱」という規定等を削除し、警職法全般を日本が批准した障害者権利条約に相応しい内容に見直すべきことを強く求める。

くしくも、健太さんが命を落とした3日後、日本は障害者権利条約に署名した。当会は、今後も、2007年に起きた健太さん事件が残したものを社会に広げ、風化させないことで、障害への社会の理解を広げ、とりわけ警察及び司法関係者に正しい理解が周知徹底されるよう力を尽くしていくとともに、国が障害者権利条約を完全に実施し、二度と健太さんのような事件が起きない社会となるよう、これからも全力で取り組んでいくことをここに表明する。

以上