2015年4月21日火曜日

●速報● 福岡高裁第3回裁判の報告

昨日4月20日に福岡高裁にて行なわれました、
安永健太さん死亡事件の民事控訴審第3回期日について、
下記のとおり速報としてご報告いたします。

第2回裁判の翌日に、福岡高裁は文書回答を指示していた


流れを変えた第2回裁判の翌日(12月16日)、
じつは福岡高等裁判所は、
健太さんの弁護団が一貫して主張してきた争点について、
佐賀県(県警)に対して、
以下の4つの争点について回答(文書での反論)の提出を求めていました。

福岡高等裁判所が佐賀県(県警)に指示した4つの回答提出(要約)
① 健太さん死亡事件の「取り押さえ行為」は、
  警察官職務執行法の第3条の「保護」として適法だったのか。
  また警察官は、警察庁の定めた『障害がある方への接遇要領』
  にもとづく職務注意の違反があったのか。
② 警察官らの(取り押さえ時の)過失の有無
③ 違法行為と健太の死亡の因果関係の有無
④ 損害の発生とその額

説得力のない佐賀県(県警)の文書回答


佐賀県(県警)は、2月20日に文書の回答を提出しましたが、
その内容は「知的障害があるかの予見は、とうてい不可能だった」、
「知的障害は特別な検査によって診断されるもので、
 警察官が現場で判断できない」、
「精神錯乱にあった可能性のある者を、
 『知的障害としてていねいに対応する』ことなど不可能なため、
 注意義務違反にはあたらない」など、
まったく説得力を欠いた文書回答を提出していました。

健太さんの弁護団は、
すでに佐賀県(県警)の回答への反論を4月13日に提出したうえで、
今回の第3回裁判を迎えました。

第3回裁判 「余裕がなかった」を繰り返したE警察官の証人尋問


第3回裁判では、弁護団の要望を受けた福岡高裁の指示で、
事件現場で健太さんを取り押さえたE警察官の証人尋問が実現しました。
尋問は、合計2時間15分に及びました。

弁護団は、「E警察官が知的障害に気づく場面はあったはず」、
そのうえで警察庁が事件の3年前に作成した
『障害がある方への接遇要領』による「適切な対応は可能だった」
ことなどを念頭に、事件当日の取り押え行為の事実経過を尋問しました。
質問の焦点ごとにE警察官の証言を紹介します。

※以下、 ●は質問の焦点、「 」がE警察官の証言、(  )が弁護団の質問・発言です。


●知的障害や障害者手帳は知っていか、また『接遇要領』は読んでいたか?

「33年間の警察勤務で知的障害の人に接したことがない、私的な生活でもない」
「療育手帳はわからない」
「障害者手帳は知っている。母も持っているので」
「『知的に障害がある人』と、手帳の表紙に書いてあればわかる」

(健太さんは、当日、知的障害福祉サービス受給者証を持っていたが、
 それを見たら知的障害と理解できたか?)

「手帳を掲示してくれれば、わかる」
「『接遇要領』は読んでいない」
「全ての警察官が読まなければならないかはわからない」

●健太さんの表情を確認したか?

「バイクに衝突し転倒し、立ち上がったところで
 腕を抑えた時から表情は確認できていない」
「アー、ウーという言葉を繰り返すばかりだった」
「ツバを吐きかけられたときも、
 服に付いたツバで確認したため表情を見ていない」
「歩道でしりもちをつき、その後仰向けになり、
 腕を抑えたが表情を見る余裕はなかった」
「うつ伏せにさせ、左手に後ろ手錠をかけたが、
 そのときも表情を見る余裕はなかった」

(発生から8分後に2人、10分後に6人の応援警察官が到着し、
 E警察官は取り押えから外れたので、
 そのとき表情を確認できたと思うが、確認したのか)

「表情まで確認できていない」

●職務質問や所持品の確認はしたか?

「アー、ウーと意味不明な言葉ばかりで、意思疎通できると思えなかった」
「暴れて自傷他害の危険を防ぐことに精一杯で、そんな余裕はなかった」

(応援警察官が来てからは、所持品を確認し、
 受給者証を見つけることはできたのでは)

「しなかった。そんな余裕がなかった」

(救急車で運ばれる頃に、ようやく他の警察官が所持品を確認していた)

●手錠の使用は違法ではないか?

「主任警察官がいなくても、現場の判断で、手錠の使用は認められている」
「うつ伏せになったところで、左手錠はしたが、両手錠はできなかった」
「自傷やバイクの運転手に危害を加える危険性、
 道路に飛び出す危険性を避けるために手錠せざるを得なかった」

(応援警察官6人が取り押えているときに両手錠をかけられたが、
 あなたが指示したのか)

「指示していない」

9月14日が判決前の最終弁論、さらに賛同・支援をひろげよう!


E警察官の証人尋問は、事件当日の警察官の取り押えの不自然な点や、
多くの矛盾・疑問が裁判官の前で明らかにされました。

しかし、その真実を語れるのは、
その場に居合わせた健太さんと、
取り押さえた警察官だけです。
しかも健太さんは、証言すらすることができないのです。

「健太さんをパニックにさせた最初の原因はなんだったのか」

「常に医師の診断がなければ知的障害と判断することはできないのか。
ではどうして精神錯乱などという判断ができたのか」

「屈強な警察官に制圧されたら、普通『やめてくれ』、
 『痛い』などの声をあげるはず、しかし健太さんに言葉はなかった。
どうしてそれに気づけないのか」

「保護するならば、本人の状態や表情をもっとも確認するはずなのに、
 一度も表情を見ていないのはどういうことか」

「もっと早く所持品の確認をしていれば、知的障害がわかったはず」

「手錠で制圧することが、『適正な保護』なのか」…

など、聞けば聞くほど、疑問点は増えるばかりです。

「障害とは何か、適正な保護とは何か」を問うこの裁判、
障害者権利条約を批准した国にふさわしい結論を願うばかりです。

次回行なわれる9月14日の最終弁論までの期間が、
この裁判でもっとも大きな山場となります。

もっと幅ひろい、もっと多くの応援・支援が必要です。
さらなるご協力をいただきますよう、どうぞよろしくお願いします。

PDF版 安永健太さん死亡事件 福岡高裁第3回裁判の報告

佐賀新聞の報道