2015年9月17日木曜日

●速報● 福岡高裁第4回裁判の報告

今週月曜9月14日に福岡高裁にて行なわれました、
安永健太さん死亡事件の民事控訴審第4回期日(結審)について、
下記のとおり速報としてご報告いたします。

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全国から集まった374人

E警察官の証言後の裁判の進展に期待

9月14日に開かれた福岡高裁の第4回目(期日)の裁判には、
全国からさまざまな障害のある人とその家族・支援者374人が集まりました。
傍聴席は70席しかありませんので、4.3倍もの競争率で抽選が行なわれました。

そのため裁判と同時並行で、市民センター・ホールを会場に
「安永健太さん死亡事件裁判 連帯集会」を開催しましたが、その内容は別途報告します。

300人もの傍聴希望者が集まったのは、
福岡高裁に入ってからの安永さんの裁判を支援する賛同の輪のひろがりがあります。

九州・沖縄各地での支援集会7月の関西集会
そして西日本新聞への2回の意見広告の掲載(4月は全面広告)なども大きな背景にあります。
そしてこれだけ多くの人が集まったのは、今回の裁判が、
4月の第3回目の裁判に立った
佐賀県警のE警察官の証言を受けて開かれる裁判だったからです。

第3回の裁判でE警察官は、健太さんを取り押さえたときも、
歩道で仰向けに抑えつけたときも、
うつ伏せにさせ後ろ手錠をかけたときも、
「表情を確認していない」と証言しました。
また「警察庁の『知的障害のある方への接遇要領』も読んでいない」、
「41年の警察職務で、一度も知的障害の人に接したことがない」と証言していました。
前回のE警察官の証言に対して、
佐賀県(警察)側がどのような反証をしてくるのか、
そして健太さんが亡くなった原因の究明に一歩でも近づくのか、
それを確認しようと320人もの人が集まったのです。

「力ずくで抑えるのは有効」、家族の責任まで言い切る警察


安永さん側の席には、安永さん親子2人のほかに、
16人の弁護団が座りましたが、被控訴人の佐賀県(警察)側の代理人は2人だけ。
さらに9人分の報道席には8人の記者が座り、満席の傍聴者を前に、裁判が始まりました。

ところが、佐賀県(警察)側の代理人からの反証も、
意見陳述も「とくにありません」の一言のみでした。

じつは佐賀県(警察)側は、5月に、警察官の取り押さえ行為を説明するために、
「自閉症や知的障害のある人は、…保護者的な立場の人がそばにいて、
見守っているから今回のような事態が生じないようにその行動はコントロールされている。
…事故を予防するためには、有形力を用いて制止するのが唯一の有効手段である」
と、家族の責任や「力ずくで抑えることを唯一の有効策」と断言した
精神科の専門医の意見書を提出しました。

また6月には、
「佐賀県警は、警察官に対する障害問題についての研修をやっている」という
A4用紙1枚程度の書面と、事件直後の新聞記事を証拠として提出しました。

そして8月末には、控訴人(安永さん弁護団)が、
障害のある人への対応のあり方、取り押さえ行為の正当性を否定するならば、
「健太を単独で行動させていた適否など、保護者としての監督状況」が問われるとまで主張した、
佐賀県(警察)側の最終書面を提出しました。

佐賀県(警察)側は、
これらの書面で言いたいことは言い尽くしたので、
「法廷で述べることなど何もない」ということなのでしょう。

民亊裁判上のしくみもあるのでしょうが、
傍聴者にしてみれば、前回のE警察官の証言について、
佐賀県(警察)側が一言も弁明しないのは釈然としませんでした。
しかも今回、佐賀県(警察)側代理人は2人だけで、筆頭代理人は欠席だったのです。

拍手が起こった意見陳述


今回の裁判のメインは、安永さん(父)と、弁護団の意見陳述でした。

最初に陳述に立ったお父さんは、
みんなに好かれていた健太さんが2007年9月、
ある日突然、その生命を失ってしまった悲しみ、
そして謝罪もなく二転三転する警察の説明に対する憤り、
「なぜ死ななければならなかったのか」を知りたくて裁判に訴えた思いを語りました。

警察官の取り押さえ行為を
「適正な保護」と断じた佐賀地裁の判決を許してしまったら、
「同じ過ちが繰り返されてしまうかもしれない」という思いから、
福岡高裁への控訴を決意したと陳述し、
「取り押さえの違法性を明らかにし、障害への理解が深まる判決を」と結びました。

続いて、弁護団を代表して、久保井弁護士が最終陳述しました。

久保井弁護士は、結審(裁判の最終審理)にあたって
弁護団が作成した81ページに及ぶ最終書面をもとに、意見陳述しました。

弁護団は「健太さんの障害に気づくべき」であり、
「障害があることを念頭においた適切な接遇をすべきだった」ことを主張してきました。
健太さんは「アスファルトに顔を押し付けられ、
うつ伏せの状態で…後ろ手錠をかけられ、許容限度を超えたストレスに生命を奪われ」ました。

大学で教鞭をとり、将来の精神科医を育てる立場にある精神科医が、
知的障害のある人に対して、「もっとも安全・有効な対処は、力ずくで抑え込むこと」と、
佐賀県(警察)側の証人として意見書を提出したことに、
「戦慄を堪えることができない」と強く主張しました。

また安永さんの弁護団が意見書提出を依頼した内山登喜夫先生は、
佐賀県(警察)側の精神科医の意見書について、
「発達障害に対する理解をまったく欠いており、明らかに医学的に間違っている」
とまで述べています。

久保井弁護士は、陳述の最後を
「全国の障害のある人とその家族、多くの関係者が、
この訴訟のゆくえに熱い視線を注いでいます。
よって立つ人権規範が正面から問われているのです。
…真の共生社会の灯火となるような判決を切に希望します」と結び
、思わず傍聴席から拍手が沸き起こりました。

判決は12月21日に!
残された97日間での運動がカギ

判決の日は12月21日(月)に決まりした。
裁判での論戦は、9月14日で終わりです。
けれども、裁判所が判決文を書き上げるまでは、
運動を続けることは可能なのです。
安永健太さん死亡事件を考える会では、以下の4つのとりくみを呼びかけました。

① 事件と裁判を知らせる「パンフレット」を全国で普及(1部300円)

② 福岡高裁への署名を12月21日判決の前日まで継続


③ 九州各地でとりくんだ学習会・考える会を全国各地で開催


④ 11月9日・憲政記念会館の「関東集会」の成功


 
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